2025年6月25日
現代では、会議弁当や法要の食事、さらには家庭のお祝い事まで広く活用される「仕出し料理」。
そのルーツは、なんと平安時代にまでさかのぼります。
当時の貴族たちは、自宅で催す宴(うたげ)に料理人を呼び寄せ、できたての料理をふるまっていました。
しかし、それが常に可能とは限らず、やがて「料理を外から届ける」というスタイルが生まれます。これが、仕出し料理のはじまりです。
「仕出す(しだす)」という言葉には、「用意して差し出す」「提供する」といった意味があります。
まさに、誰かのために整えた食を届けるという、日本らしい“もてなし”の精神が込められているのです。
時代が下ると、江戸時代には武士階級や町人たちの間にも仕出し文化が広まりました。
冠婚葬祭、茶会、年中行事など、あらゆる場面で仕出し料理が活躍。
料理屋が指定の場所に料理を届け、時には器も回収する「出前」スタイルは、今でいうケータリングサービスの原型ともいえます。
面白いのは、当時の仕出し料理屋が「味」だけでなく、
「器の格」や「献立の季節感」など、細やかな部分まで気を配っていた点。
料理を届けるという行為には、料理人の美意識や地域の風習が色濃く反映されていました。
現代においても、「手軽で上質」「個別包装で衛生的」といった理由から仕出し料理のニーズは高まっています。
しかし、その根底にあるのは、千年以上も続いてきた“人をもてなす心”。
仕出し文化は、単なる「配達料理」ではなく、日本人の暮らしと心を映す鏡なのかもしれません。
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